「綺譚」

更新日:2018年12月31日

3rdアルバム「綺譚」収録


綺譚(きたん)とは、美しい物語のこと。

ボクには二十二年分の人生の物語がある。もちろん、あなたにも、重ねてきた何年或いは何十年分の物語がある。

日々の営みの一つひとつは時間を重ねるごとに忘れて行ってしまうものだけれど、電車の車窓をぼんやり眺めている時、湯船に浸かっている時、友人と学生時代の話をしている時、何気ない瞬間にふと甦ってくる景色がある。

それは少年時代の一コマだろうか、家族の食卓だろうか。それぞれに浮かんでくる風景は同じではないはず。

その何気ない景色が特別なものだということに気付いている人は少ないようだ。

先日、三枚目のオリジナルアルバム「綺譚」が発売となった。前作から一年と少し。ありがたいことに、その前作「ポートレイト-肖像-」が早々に完売し、三枚目を、という運びになったのだ。

冒頭で語った想いを十曲にちりばめた、所謂コンセプト・アルバムとでもいうのだろうか。

はじめはテーマなど決めずにバラバラ取り掛かったのだが、最終的にそれぞれの作品が繋がっているような仕上がりになった。

タイトル曲でもある「綺譚」は、メロディとアレンジ先行で制作した、もしかしたら第一号かも知れない。

今までは専ら詞先、つまり歌詞を先に書いてメロディを付けていく方法が主だった。

メロディは今から約三年前、大学二年の頃に作り、作曲しながらアレンジも同時進行でやっていた。本来であれば、ボクの場合、詞がまず出来上がり、曲を付け、最後にアレンジをする。まさに昭和歌謡的なやり方だったが、新たな試みとなった。

いつもはアレンジで苦しむが、今回レコーディングの直前まで苦しんだのは詞だった。

スタジオに向かう電車の乗り換えを待つホームで必死に書いた。ギリギリまで歌詞が書き上がらなかったのは初めてのことである。

ちなみに、同アルバム収録の「夙夜」と「嗚呼惜春」もギリギリまで納得のいく詞が書けず、この「綺譚」を含めた三曲を駅のホームで行き交う人たちを眺めながら書いていた。

いや、実際には他人を眺めてる余裕なんてなかった。

「夙夜」を一行書いては、「嗚呼惜春」に移って一行書き、再び「夙夜」に戻ってまた一行書き、今度は「綺譚」のサビを仕上げ・・・という感じで三曲同時に書いていたからだ。

今思えば意味が分からない。

兎に角そんな感じで何とかレコーディングに間に合い、事なきを得た。

特にこの「綺譚」の詞は、自分の体温にもっとも近い歌である。

〽こぼれた赤が海にとけてゆく

空からこぼれおちるように夕陽が水平線の向こうへ沈んでいく時、丸い夕陽が海に映るとぐにゃぐにゃと溶けていくように見える。

美術の時間、赤い絵の具の付いた筆をバケツに入れると、ふわっと水の中に赤い波紋が広がっていくのが好きだった。

港町育ちで、子どものころから見てきたそんな夕暮れの風景と重なるからだろうか。その美しいマジックアワーはしっかりとボクの心象風景の中にこびりついている。

〽まだこの手にあるやわらかな日々

歳を追うごとに増えていく皺。つるつるとした手のひらも、いつかはしわしわになる。だが、それは人生を重ねてきた紛れもない証であり、年輪。

ありきたりなことを言えば、皺と皺を合わせて、仕合せ(幸せ)になるのだ。

雑なまとめ方ですが、アルバム、是非お買い求めください。


「綺譚」

作詞・作曲・編曲 長谷川万大


こぼれた赤が 海にとけてゆく

たゆたう想い 琴線(こといと)をゆらす

未(ま)だこの手にある やわらかな日々

もえのこる 夢たちとともに

風と一緒に帰ろう いつか来た道

めくるめく季節が 会わせてくれる

ここにある物語


昏(く)れなずむ街並 それでもやがて

夜は降りそそぐ 会うは別れの

はじまりと 人が云う


風を連れて帰ろう いつか来た道

人生は今だけ めぐり逢わせの

くみあわせ愛したい

ラララ・・・

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