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「つづく」

更新日:2018年12月31日

3rdアルバム「綺譚」収録


二年前、ボクの通う大学のイメージソング「はるかなる旅」制作と同時に動いていた計画で、プロの映画監督とともにPR動画を撮影することになっていた。

残念ながらこの計画はオトナの事情でバラシとなってしまったのだが、この撮影の為にワンコーラスのみの挿入歌を五曲ほど作っていた。

そのうちの一曲がこの「つづく」である。

五曲はどれも悪い出来ではなかったし、特に「つづく」は気に入っていた。このまま宙ぶらりんにしておくのも勿体無いから、詞もメロディーもアレンジもデモテープのまま、新しくタイトルだけ付けて録音した。

PR動画がバラシになった段階では、脚本と挿入歌は完成していて、撮影を待つのみだった。

「つづく」は動画の中で最初に流れる挿入歌で、物語の要となる曲。

 〽いくつもの夢を見たけれど僕なんかには叶えられない

物語の主人公は、進路に悩む高校三年生の男の子。あれこれやりたいことはあるけれど、自分なんかには大きすぎる馬鹿げた夢ばかりだと塞ぎ込んでしまう。

 〽ましてテレビの向こうなんて行けるはずないだろう

そんな大それたこと恥ずかしくて周りには言えない。誰にも話せないまま時間だけが過ぎていく。

 〽時間さえも忘れる何かを探しに行きたい

そして心の葛藤を繰り返し、家族や友人たちと接する中で少しずつ気持ちが変化する。

 〽もう答えは出ているのかも知れないけれど

たとえ難しくても、無理かも知れなくても、そこへ飛び込んでみたい。もしもそれができるのなら・・・

 〽どうしようもなくてもどかしいんだ

本音を言うと怖いけれど、そんなこと言っていては何にもできないよね。

当時の記憶をたぐり寄せて、「つづく」が流れるシーンをざっくり書いてみた。

ちなみに脚本を担当したのもボクである。

詞を読んだ限り、大学のPRにしては何だか暗いような重いような。物語の導入部の曲なのでそれは致し方ないが、何故テレビの向こうへ行きたがるのか、と疑問に思われた方もいらっしゃるだろう。

ボクの大学には芸能コースがある。正式には芸能マネジメントコース。経営学科の中で枝分かれしているコースの一つである。

未だに言われることだが、大学進学を決めた頃、周囲からよく訊かれた。

シンガーなのに、どうして経済の大学に進学したの?

そんなことは他でもない、この芸能コースがあるからだ。

芸能コースを目指してきた者だから、テレビの向こうへ憧憬を抱く少年を描きたかったのだ。

脚本の中で、主人公に父親がこんな言葉を投げかける。

“今やるべきことは、今やりたいことだろ?”

高校の頃、ボクがずっと胸に抱いていた言葉である。

そして背中を押してくれた言葉でもある。

誰かから言われた言葉というわけでもなく、いつの間にか自分の中にあった。

ほんの一時期でも自分を支えてくれた言葉は、いつまでも心に残り続ける。日常の営みの中で忘れていたとしても、ふとした時に突然甦ってきたりする。そのふとした瞬間は大事なタイミングで、何かを教えてくれている。言葉は道の先を照らしてくれる標なのだ。


「つづく」

作詞・作曲・編曲 長谷川万大


いくつもの夢を見たけれど 僕なんかには叶えられない

ましてテレビの向こうなんて 行けるはずないだろう

時間さえも忘れる何かを 探しに行きたい

もう答えは出ているのかも 知れないけれど

どうしようもなくて もどかしいんだ

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