• 長谷川万大

「Breath」

最終更新: 2018年12月31日

2ndアルバム「ポートレイト」収録


高校3年生のゴールデンウィーク。まだテレビラッシュが始まる前で、CMに出ていたことも忘れられ始めた頃だろうか。

我が家はたまに泊りがけで霧島へ行く。たいていはボクが言い出しっぺで、旅行気分を近場で味わおうという魂胆だ。

けれど、この日はただのんびりしたくて霧島行きを提案したのではない。曲作りに行き詰っていて、いつもの作業場である自宅を飛び出してどこか自然豊かな静かな場所で曲作りに取り組んでみたかったからだ。

お察しの通りそこで生まれたのがこの「Breath」である。

さて、霧島の宿に着くと、まずは散歩からだ。

慣れない土地を歩く時ほど胸がトキメク瞬間はない。時折澄んだ空を見上げながら、自分の思うままに歩いていく。誰にも邪魔されない、何も考えなくていい至福の時間。

そして重度の方向音痴のため、いつの間にか道に迷って帰れなくなってしまう。

散歩をしているのか道に迷っているのか分からないが、これこそが醍醐味なのである。

まるでこの広い世界に自分だけが堕とされたかのような白昼の静寂・・・みんな、みんな何処に行っちまったんだよおおおおおおお!

そんな妄想を楽しんでいると『ワンワン!』と犬に吠えられて現実に引き戻されたりする。

やっとのことで夕暮れまでに宿に辿り着き、食事をして温泉に浸かり、すっかり心も体も生まれ変わったところで部屋にこもって作業開始となる。

詞を見ながら適当にフンフンした時の第一声が明らかにいつもと違う。ノッている。旅の昂揚感のなせる業だ。

昼間の散歩で吸収した空気が自分の体の中に沁みわたり、それが音に化けて発散されているような、そんな感覚だ。

ボクの中でこの歌のテーマは、「さわやかな未練」である。さわやかさと未練、この相反する二つを同居させたかった。

呼吸するように当たり前の存在だったキミを突然失った男がただつらつらと別れを惜しんでいるように見えるが、ひとまず別れの辛さを自身の夢に昇華させて前へ進もうとはしている。『キミ』が駄目なら『夢』を追いかける、だけどきっといつの日かまた夢の途中で出逢えることを信じているよ、という切ないお話だ。

とはいえ、ボクは行き当たりばったり、筆の進むままに書いていくタイプなので、最初にテーマを決めて詞を書くことはほとんどない。書き終わって暫くして、ああ、こういうことが言いたいのかな、と推測する。

この場合もそう。初めから「さわやかな未練」を題材に書いてみよう、とはひとかけらも思っていなかっただろう。なんとなく、ラブソングでも書いてみるか、みたいに適当に始まるのだ。

〽涙越しに受けとったサヨナラの言葉

しかしなんて女々しい男なんだろう。別れ際に泣いてやがる。どんな泣き方をしているのかは皆さんのご想像にお任せすることになるが、この男はすごくいいヤツなのだ。

〽この街にいなければ会うこともなかった 名前の無い夢の途中でキミと

必死に夢を追いかけていたのに、その途中でキミと運命的な出逢いをしてしまった。そして狂わされた(笑)

ずっと追いかけていた夢さえ捨てる覚悟があったのに、自分のほうが捨てられちゃったんだね。

どんなフラれ方をしたのかは知らないが、涙を流してもキミに対する憎しみなど無く、むしろもう一度キミと出逢いたいなんて言っている。女々しいけれど、芯はしっかりしてんのね。


「Breath」

作詞・作曲・編曲 長谷川万大


すっかり大人模様に変わり始めたころ

足元の枯葉も花に変わる

この街にいなければ逢うこともなかった

名前のない夢の途中でキミと

いつか二人で見たかった空と海の交差点

あの頃は運命だとずっと信じていた

キミの影に寄り添うだけでいい

いつまでも同じ夢を見れるだけでいい

二度と戻らない時間それは息のように


見つめるだけで伝わった心の鼓動さえ

僕を困らせてる息もできずに

涙越しに受け取ったサヨナラの言葉

背伸びしてた日々に別れを告げて

今はすべてが思い出に出逢ったあの日のことも

時の流れの悪戯でキミは忘れるだろう

次の出逢いもキミだけ待ってる

その日まできっと夢を追いかけ続ける

決して形にならないキミは息とともに

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