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「タイムラグ」

更新日:2018年12月31日

2ndアルバム「ポートレイト」収録


もともとはこの曲、ボクが在籍していたシネマサークルが学園祭に出展する為に制作していた映画の主題歌として誕生した。

どうせなら主題歌作っていい? というボクの提案に、サークルのメンバーたちは二つ返事で賛同してくれた。「長谷川の作る歌なんて、ジジくさくてイヤダヨォ!」みたいな反応があるんじゃないかと若干の恐怖はあったが、みんなそんな素振りを一ミリも見せずに任せてくれた。

このライナーノーツでは何度も書いてきたように、基本的にボクは曲作りに時間がかかる。時には一年を越えることもある。とんでもない話だ。主題歌制作の話を持ち掛けた時には、映画が出展される学園祭まで四ヶ月ほどあったから、まァそれだけあれば何とかなるだろうと、自分から言い出しておきながら間に合わせる気があるのか無いのか分からなかったが、そんな時に限って早く出来ちゃったりする。

それから二、三週間後くらいだったろうか。サークルのミーティングにボクはギターを抱えて登場し、出来立てほやほやの曲を聴いてもらった。

歌詞の内容は映画のストーリーとリンクするようになっていて、それでもって新たな世界観を想像してもらえるような構成を取り、エンディングに流れるこの歌があってようやく物語が完結! というイメージに仕上げた。

その上、今までの長谷川作品には無いコード進行。自信はあった。

みんなの反応もそう悪くは無かったと記憶している。何より初めてボクの歌を聴いた後輩達が、「あ、この人、歌う人なんだ」みたいな目でボクを見ていたのを憶えている。そうなんですよ、歌う人なんですよ。

曲のアレンジは、2バージョン存在する。シネマバージョンとアルバムバージョンである。

シネマバージョンはストリングスがメインで重厚かつ壮大な効果を生み、作品の雰囲気を尊重してうまく溶け込ませることを意識した。アルバムバージョンは打って変わってロックになっている。

アルバムバージョンは、「ブゥーン・・・カチャカチャカチャ」というベースの音から始まり、かぶさるようにドラムとギターが加わっていくイントロ。

そしてそのベースに続く「カチャカチャ」という音が映画のフィルムが回る音に似ているため、これから一本の物語が始まるぞ、というアルバム全体のイントロダクションの役割も果たしている。お気に入りの部分でもある。

一曲目はアルバムの大事な“顔”。

昭和歌謡男子のイメージが強いボクのアルバムだから、当然そんな感じの歌ばっかりなんだろうなと思って再生してみたら、えーこういうのもやるのね~、と意表を突かれるのではないかと目論んでの選曲だ。良い裏切りをしてみたかった。聴いてくださった方がうまいこと裏切られてくれたかは分からないが、以前アルバムをお買い上げいただいた方からこういう言葉を頂いた。それは、

「新しいんだけど、なんだか懐かしい。」

ボクはまさにこの言葉を求めていた。こう言われるような作品づくりを目指してきた。昭和の偉大な名人たちが遺したスタンダードを、長谷川万大というフィルターを通してお客様に伝えてきたボクの進む道は、まさにこの言葉の先なのだと思っていた。これは嬉しかった。


「タイムラグ」

作詞・作曲・編曲 長谷川万大


一秒前にいた君を見つけた それは僕の知らない人だった

夢から戻されたような感覚 指先がしびれているのが解った

数え切れない歯車が重なって たしかに時を刻んでいるけれど

ほんのわずかな 誤解から生まれることもある

君を君と知る その瞬間までに どれだけの時間を旅しただろう

出来事はまるで 星のひとカケラ

すれちがいざまに ぶつかり合い乍ら 出逢ってゆく


たぶん偶然なんて ただの思い込み つまらない日々を彩る 隠し味

揺れる髪も 服も 仕草も ぜんぶ 言葉さえ一句違えず覚えてる

考えること、すべて絵空事 夢と現実のあいだの往来で

けれど 不意に もっと 大きな 出来事になる

僕が僕を知る その日が来るまで 遡り行き過ぎくり返すだろう

出来事はいつも 同じ歩幅で

気付かれないように 僕等の背中に ひそんでいる


君を君と知った その瞬間 から 巻き戻すことはできないけれど

出来事はまるで 星のひとカケラ

すれちがいざまに ぶつかり合い乍ら 出逢ってゆく

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