「ひとり芝居」

最終更新: 2018年12月31日

3rdアルバム「綺譚」収録


スマートフォン。

レストランでお互いにそればかりを見つめて、会話している気配のない二人組に遭遇することがある。

何が楽しいのだろうか。もはやそこに二人でいる意味などあるのだろうか。

街中でも電車でも誰かと一緒にいる時でも、誰もがずっと手のひらを見つめている。

あの二人組がアベックだとしたら・・・最悪である。いや、それも幸せの形なのかもしれない。

いやいや、やっぱりそんなのはダメだ。黙して語らぬ仲だとしても、機械に汚染された二人の間は決して素敵とは云えない。

だがもっと最悪なのは、片方だけがスマホに夢中になっている時だ。もう片方は黙って、目線の合わない相手の顔を見つめるしかない。

悲しい世の中である。

この歌の主人公がいたたまれない。

私といる時よりも他の人といる時のほうが楽しそうに見えるわ、あなたと一緒にいてもスマホばかり見つめて、話しかけても生返事ばかりでこれじゃ一人でいるのと変わらないじゃない!

要注意なのは、冷め切っている関係に気付いているくせにまだズルズルと一緒にいることである。

自分に視線すら向けてくれない相手に、これ以上何を求めるのか。

ところが、最後に意外な答えが返ってくる。

私はそんなあなたの手のひらで踊っているだけなのよ、分かってるのよ、それでいいのよ。

すごい女だ。割り切ってるのね、この関係。ちょっと私には理解できない。

この歌は、宮崎で活動する現役女子高生シンガー・唐金瑠愛(からかね るあ)さんの為に書いた歌だ。

ボクは純粋な女の子になんて歌をあげてしまったんだろう。この時、彼女はまだ中学三年生だった。

しかしながら、それは敢えてのことでもあった。

純真無垢な少女が背伸びして大人の女を歌う。歌の意味など分からなくてもいい。いつかふと、これはこんなことを言っていたんだ、となんとなくでも感じてもらえればそれでいいと思った。

実は、もともと別の曲をあげるつもりでデモテープを用意していたのだが、渡す前日になってちょっと雰囲気違うかなぁと慌てて作り直したのがこの歌である。24時間テレビの本番前日だったと記憶している。

詞も曲も合わせて十五分くらいで完成した。「時の流れよ、ゆるやかであれ」に続く速さだ。

ボクの作品の中で特にお気に入りの歌でもある。

彼女が歳を重ねて自分の人生を振り返る時、この歌を心のどこかで思い出してくれたなら、この歌の本当の役目は果たせたということになるだろう。

それはボク自身にも云える。

歌は足跡だ。

思い出の歌を聴くと、瞬時にその当時にタイムスリップするように、歌は目次なのだ。

その時躰に受けた風は、もう二度と自分のもとには訪れない。だが、思い出すことは容易い。

そのために歌は生きている。


「ひとり芝居」

作詞・作曲・編曲 長谷川万大


あなたの寝息を聞き乍ら 見つめてたブルーアワー

一緒(そば)にいるのにどうして こんなにもせつないの

夜の闇は心の中を映す鏡

取り残された二人は お互いが見えない

たぶんあなたと幸せになれないことくらい

分かってたけど 寝顔見るたび胸がいたくなる


私の話も上の空 手のひらばかり見つめてる

ほかの人といる時には 輝いて見えるのに

二人きりでもいつも別々にいるようで

馬鹿みたいに笑顔を見せて 心じゃ泣いてる

ひとり芝居の主人公 慣れたものよこれくらい

あなたの手のひらで 踊ってただけそれだけのことよ


ひとり芝居の主人公 慣れたものよこれくらい

あなたの手のひらで 踊ってただけそれだけのことよ

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